(最終更新︰2021年7月24日)
校正、校閲の仕事はなくなるのでしょうか?
AIや機械学習が注目され始めて久しくなり、自動運転やAIアシスタント、文章校正という分野で活躍が期待されています。 「AIが仕事を奪う」という不安は誰に対してもありますが、これから校正、校閲の仕事はなくなるのでしょうか?
結論から言うと、仕事はなくならないと考えます。ですが、生存戦略は必要です。そして改めて、美しい日本語を使う校正、校閲は本当に素晴らしい仕事と思いました。
私たちはAIを使った文章を校正するシステムを作りながら、文章も書いています。 AIをやっているからこそ分かる視点で、校正、校閲の仕事はなくなるのか? と僕たちにできる3つの生き残り戦略・生存戦略 を考えてみます。
誰がこの文章を書いているのか
私たちはShodoというWebサービス・プラットフォームを開発、運営しています。
Shodoは原稿・記事の執筆・レビュー・AI校正プラットフォームで、原稿やブログ記事、ランディングページの文章執筆にお役立ていただけるWebサービスです。
とくに複数人でブログなどからコンテンツマーケティングをしているチームにはオススメです。ShodoはAI校正だけでなく、執筆のあり方そのものを再定義しようとしています。「コラボレーションやレビューのやり取り、執筆タスク管理を含めた新しい執筆のあり方」を含めて大切に考えています。AI校正は(重要ですが)1つの機能でしかありません。
Shodoについて詳しくは以下のサイトをご覧ください!
AIの現状と課題
現在のAIは(とくに最近)言語処理の分野においてとても急速に進化しています。BERTやGPT-3が作られたことなどもあり、翻訳や文章の生成がかなり自然に近づいています。
ただ現状、AIで文章の校正・校閲をする場合、以下が難点になります。
- 実行する速度が遅い
- 実行にかかるコストが高い
- 日本語の助詞など難しい点に対応しきれない
なので「今すぐすべての校正、校閲、文章作成の仕事がAIに取られる」ということはありません。
ですが速度の問題は、BERTであればQuantize(量子化)したりDistil(蒸留)といった手法で解決されていきます。コスト面もGPUやTPUの価格が下がるにつれて安くなるでしょう。日本語の助詞など判断が難しい問題も、いずれ日本語に強い手法が開発されて解決されていくと期待できます。
Siriが登場してから10年ほどになりますが、まだペラペラとは言いにくいですね。ですがたしかに進化しています。このようにAIが進化していく未来は間違いありませんが、今すぐという時間感覚ではなく、手法が劇的に進化しつつも世の中は緩やかに変わっていくでしょう。
AIが進化しても生き残る道は?
AIが進化するごとに、現在の仕事が補助されて省力化されていくのはすべての産業で事実です。 では校正、校閲という仕事に関わる僕たちが、より「AIに仕事を奪われない」にはどうすれば良いのでしょうか?
AI、文章の両方に関わるものとして考えてみました。以下3つの戦略です。
「校正」でなく「校閲」をする
単語の打ち間違いやミスを修正する「校正」は、AIや機械に置き換えられやすいです。
ですが「校閲」として文脈や意味を理解したうえで言葉を選んだり、日本語の正しい使い方を判断するのはAIにも難しい問題です。ですので「単純なミスを指摘する仕事をしているのであれば、校正・校閲について勉強してより複雑な仕事をする」ことが生き残りの戦略となります。
たとえば「笑顔がこぼれる」という日本語は間違いで、「笑みがこぼれる」と書くべきです。ですが実際の文章では前者が存在していますので、これを元にAIが学習すると誤用を許容してしまいます。「校正」と「校閲」という言葉の違いも、文脈を相当理解しないと判断しきれません。そういった微妙な言葉の違いや、「モヤッとしない言葉の使い方」を完璧に指摘するのはAIに難しいです。
もちろんそれらも含めてちゃんと学習したAIというものを用意できれば解決できます。ですが、こういった誤用は相当量存在しますし常に変化します。すべてをちゃんとした文章を用意して学習させるというのは、かなり時間とお金がかかるでしょう。
美しい日本語や心に響く表現を書けるようになる
校正や校閲という枠を超えて、「文章として人に伝わるかを指摘しよう」という戦略もあります。
それはもう校正や校閲とは言えないかもしれませんが、良い文章を一緒に考える人というのはいつも重要です。なぜなら人間が1人で文章を書くと、その人1人の視点でしか考えられないからです。人の心を理解して文章を書くのは現状AIにできません。読者やその人の背景や心境を理解して伝えるのは人間にしか究極的にできません。AIは進化しますが、心を理解するのはかなり未来の話です。
単に言葉のうえでの指摘をするのでなく、日本語の文化や読者の背景を理解したうえで誤解なく伝えることは、今後も重要で素晴らしい仕事だと思います。
特定の分野に強くなり、査読をする
特定分野の内容に強くなるのは、AIに仕事を奪われない戦略として正しいでしょう。
AIを分野ごとに校正、校閲できるようにしようとすると、文章の意味する分野ごとにAIを学習させる必要がでてきます。とくに専門的な分野であれば、その分野ごとに(BERTであれば)「ファインチューニングしたモデル」が個別に必要になります。これは分野の数が増えるごとにコストが大きくなるので、専門性が高まるごとに、人間の仕事が重要になります。
たとえばホビー、サブカルチャー、ガジェット、エンジニアリングや音楽になると専門用語は多く複雑です。さらにニュアンスなども含めて理解する必要があり、時代や意味の入れ替わりが激しいものです。そういったすべての分野を事細かにAIでカバーするのは相当の労力とお金が必要になります。
逆に、金融や法律、経済などの分野は言葉の変化も比較的遅いですし、需要もビジネス上の金額も大きいのでAIによってカバーされていくでしょう。とはいえやはり専門的な内容を間違いなく指摘できるのは人間にしかできないので、専門分野の校閲、査読という仕事はなくなりません。
人はよりAIでクリエイティブになれる
まとめて考えると「機械的」な部分はAIに徐々に置き換えられていくものの、「人間的」な部分はAIにも時間がかかるだろうということでした。
機械的な間違いの指摘などはAIやプログラムに任せて、余った時間を使ってより素晴らしい文章を書く。そんな未来がくるのではないでしょうか。たしかに「仕事がなくなる」と怖いことではありますが、「それ以上に素晴らしい仕事ができるようになる」ことでもあります。
未来を予見して、その流れが進む方向に一歩先へ進んでいく。 それはこれからの時代、すべての仕事で重要になる心構えなのかもしれません。
そんな未来に向かう皆さんのお力になれるよう、これからもShodoを全力で開発します。 気になる方はぜひ、以下からご利用ください。相互レビューやAI校正の機能も含めて、オープンベータ版の今だけ無料ですべての機能が使えます!
この記事はShodo (https://shodo.ink) で執筆されました。